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「志童様が受けるとお決めになったなら、私はそれに従うまでです。しかしながら、本来の仕事や志童様のお世話に支障をきたすとなると・・・・少し考えものですね・・・・」 ___いや・・・俺の世話って・・・・  突っ込みたくなるのを、ひとまず抑えていると慶覚が腕を組んでため息交じりに言った。 「そうよね・・・・捜査協力なんて言って久遠警部にいいように使われるのは少し気に入らないわね」 「そうか・・・・じゃぁ俺が決めていいんだな?」  琉も慶覚も笑みを浮かべて頷いた。それに応える様に志童も深く頷き返す。  「久遠警部、捜査協力お受けするにはいくつか条件があります」 「ほう・・・伺いましょう」 「ひとつは情報を隠さないこと。それはどんな些細なことも・・・です。ついでに言えば、事件や妖の事だけでなく貴方方のことも・・・・。先日の飯野家では、少なくとも、零係の存在や祇園寺刑事が陰陽師であるということなど、言わば後だし状態であった。今後情報を隠していたと発覚した時点で俺達は手を引く・・・・」 「なるほど・・・・わかりました。いいでしょう」 「あとひとつは、内容を聞いた時点で俺が拒否と判断した場合、その事件については俺達は関わらない」 「・・・・なるほど、つまり逃げる・・・と、琉さんや慶覚さんにはできないだろうと・・・そういうことですね」  志童は鼻で笑った。 「久遠警部、悪いけどその手には乗らない。俺はここの妖たちに名を与え図らずとも妖のルールじゃ主となった。こいつらがどう思っていようが、俺はこいつらを守りてぇ。だたそれだけだ。それで俺が臆病と言われようが、無能と言われようが構わない。ただ、久遠警部。あんたが俺らの力を必要とするなら、二度と俺の前でこいつらを馬鹿にしたり、試したりすることはやめてもらおう。以上が俺の条件だ」  きっぱりと言い切った志童の両サイドで、琉と慶覚は小さな笑みを浮かべたまま黙っていた。もちろん、志童の背中でルドも。  志童と久遠警部は黙ったままにらみ合っていた。誰も言葉を発しないままで相談所の中がしんと静まり返った時だった。  「くくくっ」と喉の奥で笑ったのは、祇園寺警部だった。その笑いはやがて大きな笑い声となる。 「あかん久遠警部、あんさんの負けですわぁ。この志童はんってお人、どうも久遠警部が思うてはるようなアホちゃいますえ」 「確かに・・・私は少し主殿を見くびっていたかもしれませんね。いいでしょう。その条件飲みましょう」  志童はほっと息を吐きだした。 「琉、慶覚・・・他の奴にも聞かないで決めちゃったけどいいかな?」  志童が両サイドに視線を巡らせながら言った。 「志童様、もちろん異論はございません。他の者たちも異論はないはずです」 「私もっ」  そう言って慶覚は親指を立てて見せた。 ___やっぱり慶覚のリアクションの最先端は昭和止まりなんだな・・・  
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