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参
程なくして刑事と複数の鑑識官がやってきた。
すぐに1階のトイレは立ち入り禁止となり、招待客たちはパーティーが行われた会場に集められる。
志童と琉も例外ではない。
会場の隅で庄吾は頭を抱えている。
無理もない。自宅で他人が死んだのだ。
それも恐らく殺人であろうことは素人でも容易に想像ができる。
その隣で、杏子は青い顔をして震えていた。
香澄はといえば____。
目玉を見たときはあれほど取り乱した香澄であったが、今はメイドと共に招待客へお茶を配って回っていた。
「なんつぅうかさ・・・・気丈だよな・・・」
「そうですね・・・・ですが・・・・」
琉は何か考え込む様に、口元に手を添えている。
「どうした?」
「なんでしょうか・・・・何か・・・気になるのです」
「え?あぁ、そうだ。お前の千里眼で犯人とかわかるんじゃねぇの?」
「そうなんです。通常であれば・・・・しかし、それが見えないのです」
「え?それってどういう・・・まさかスランプ?」
「いえ、スランプなどありません。おそらく、何者かが邪魔をしている・・・・そういうことでしょうか」
「は?いやいやいやいやいや・・・・待てって!それって、お前の正体知ってる奴がいるってことじゃね?それ、まずいだろー?」
「えぇ・・・そうなんですが・・・・」
あくまで冷静な琉に、むしろ志童がもどかしい。
「ちょっと琉、こっち」
志童は琉を引っ張って庭にでた。
招待客の為に設置された灰皿の前で、たばこに火をつける。
何時間ぶりかでゆっくりと吸い込んだニコチンは、志童の頭をクラクラさせた。
何度か吸った後で、志童は琉に向き直る。
「さっきのことだけど」
「はい」
「ここにお前意外にも妖がいると____そういうことでいいか?」
「おそらくは____」
志童は小さくため息をついた時だ。
「おや、妙な気配がすると思ったら」
振り返るとそこには刑事がいた。
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