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霊脈に聳える総本山───
【四天叡聡寺】。
四天明宗の総本部であり、限られた者しか立ち入れぬ場所。
講堂の玄関前に、影がふたつ。
ひとつは、退魔師・『蘇芳』。
ひとつは、百鬼案内人・『五乃笠 慧玄』である。
ふたりとも、四天明宗の出で、いまは破門されている。
「なあ、慧玄」
「なんでしょう」
「居心地はどうよ?何十年ぶりの“胎内”は」
「ひひ。相も変わらずで」
慧玄の提げた餉箱がごとりと音を立てた。
講堂から、師僧がひとりあらわれた。
東山エリアの寺院を統治する『黄丹』一身阿闍梨である。
「よォ”菊帯”さんよ。やっと事態の重大さがわかったかよ」
「───」
「そのようすだと、ちゃんと告げたようだな。『鞍馬大僧正』さまに、おれの言伝を」
黄丹は軽く眉根を寄せた。
「さすが“同期”なだけあるよなァ」
蘇芳が、頭のうしろで腕を組んだ。
「だまれ、『白晄』。だからきさまを尊重し、特例ではあるが、わが総本山の敷居を跨がせた」
「境内の石畳までってどういうことよ。せめて講堂にいれろや」
「図に乗るな。本来はきさまがここにいること自体、あってはならぬ」
「どうやらほかの師僧さまにもご内密になさられたごようす」
慧玄のぬめりとした口調に、黄丹は不愉快に口を曲げた。
「端的に云おう」
【モンショウ】が復活するかもしれん───。
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