第102話 【不穏】

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    「あっちゃ~。それ言葉にしちゃ不味(まじ)ィんじゃねえの?」 「だれが聞いているかわかりませぬぞ」 「この議題(ぎだい)はすでに総会(そうかい)のメインに()え置いた」 「“(ぬえ)”よりもっと深刻(しんこく)だってのかよ」 黄丹は眼で首肯(しゅこう)した。 「蓮台(れんだい)()にて(ほこら)(やぶ)られた」 蘇芳の()が、軽く(ゆが)んだ。 反応は薄い。わかっていたことだから。 慧玄も、おなじである。 「(よみがえ)ったのだ。【(おに)】とならんで(きょう)(みやこ)(やみ)()めた大妖(たいよう)───一族(いちぞく)をまとめる大頭(おおがしら)四凶(しきょう)がひとり」 『土蜘蛛(つちぐも)』が。 四凶は、存在そのものが世を(まがつ)(おびや)かすといわれるよっつ厄災(やくさい)。 「その土蜘蛛を復活させただけでは()()らず、ふたつめの四凶・『アカギ』にまで接触(せっしょく)(はか)った」 『アカギ』───大妖(たいよう)・『大百足(おおむかで)』の化身(けしん)。クチナシ島を統率(とうそつ)する皇帝(こうてい)。 ふたりは黄丹の言葉をただ聞いているだけで、反応はない。 それも、予想できたことだから。  
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