虹霓の彼方

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時々、スマホで経路を確かめながら、あの日と同じ道を行く。 街中を抜けて、山へ向かう。 途中に、古民家の叶屋という蕎麦屋。 篠さんが、自分へのご褒美に立ち寄る店。 至福のランチを思い出しながら、まだ営業していない店の前を通り過ぎた。 道なりに少し走ると、突然、山が開けたように、二頭の龍が出迎えてくれる。 「天ノ龍神ヶ洞」 篠さん、 来ました。一人で。 バイクを止めて、石段の手すりに絡みつく、まるで洞から這い出たような龍の身体を触りながら入口へ向かう。 開場は冬季10月〜3月10時。 まだ、大分時間があった。 しんとして静かだ。 人の姿はなかったが、入口のすぐ脇にある出口の扉が開いていた。
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