虹霓の彼方

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暫く、石段に腰を下ろしていたが、内側からの風に、パタンと開く扉が気になって、そっと中に足を踏み入れた。 冷やっとした風が吹く。 足元を照らすオレンジ色だけが続いている。 流れる水音。 数日、雨が降ったせいか、地下に染み込む水量も多いのかもしれない。 滑らないように、慎重に進む。 繋いでくれる手がない。 篠さん…。 「出逢の時」 天井から下がる鍾乳石と、地表から伸びる石筍。 1cmの伸長に70年〜130年。 あれから10ヶ月。 気の遠くなるほど長い10ヶ月だけれど、滴りの一滴に比べたら刹那。 「出逢う瞬間には立ち会えそうもないな」 篠さんがそう呟いていた。 一滴の落下を見届けてから、奥に進む。
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