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大勢の人、大人も子供も、みんな楽しそうに、同じ方向に向かって歩いている。
何処へ行くのだろう?
俺は人混みに押されながらも、辺りを見渡して、その波から抜け出した。
道いっぱいの人。
何か、イベント?ライブとか?
そんなことを考えながら、ずっと先の方を見ていると、俺を呼ぶ声がした。
「じゅーん、おーい。純っ」
篠さん?篠さんの声。
「篠さーんっ」
人混みを伸び上がるようにして、篠さんが片手を挙げた。
俺は波の中に割って入り、篠さんの側へ行った。
「純…」
篠さんの手が俺の手を掴んだ。
「迷子になるだろ。こんな人混みなんだから」
「篠さん、篠さん、探してくれたんですか?」
「当たり前だろ。やけに軽いと思ったら、首輪が抜けて、リードだけ握ってた」
「酷いな。いつも置いてきぼりにするくせに。ワンワン文句言いますよ」
「だな。悪かったよ」
そう言って笑うと、篠さんの手が指を絡めてギュッと握った。
ああ、篠さんの手。
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