1、須藤先生との最悪な出会い

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 午前中の授業は、悶々とした不快な気分を押し隠しながら終えた。昼休憩は、一時間。学校の近くには、定食屋やカフェはもちろん、パン屋やスーパー、コンビニ、和菓子屋まである。買うには不自由しないが、クラスメートの大半はお弁当を持ってきていた。  私は、週の半分はお弁当。半分は、買いにいく。正直なところ、金銭面で不自由してはいないため、毎日買い食いでもいいんだけど。  やはり、そこも、周りの目が気になるところだ。  結局、近くのパン屋でパンを買い、朝方購入したお茶と一緒に、学校の一階にしつらえてあるテラスで流し込むように食べた。  午後からは、障がい者心理と社会福祉、そして選択科目だ。  前述の一つ目は、外部からの非常勤講師が講義を行い、二つ目は担任の受け持ち科目。三つ目は、今日初めて受講するが、外部講師だということだ。  私は、昼食のゴミをゴミ箱に押し込んで、教室に戻った。  学校が始まってひと月弱。すでにクラスでは、いくつもの友人グループができている。  私はどこにも属しておらず、かといって、関わっていないわけではない。ちょうどよい、微妙な立ち位置。誰にも介入されない、心地よい距離感を保っている。 「ねぇ、鏑木さん」  ふいに、声をかけられて、机に向かう足を止めた。  クラスメートの加納命が、にっこり微笑んで私を見ていた。加納さんは、友人の美月さんと話している途中らしく、美月さんが座っている机へ乗り出すように、前の椅子を反対に向けて座っていた。 「次の授業って、移動だっけ」 「ううん、ここだよ」 「そっか、ありがと」  加納さんは、何事もなかったかのように、美月さんとの話を再開した。私も気にすることなく、自分の席につく。  午後からの授業は、講義が中心だった。クラスメートの誰もが、社会福祉論が終わったときに大きく伸びをしたり、ため息をついたりと、露骨に退屈さをアピールしていた。  もう帰りてぇ、と誰かが呟いた言葉に、誰かが共感している声がする。  わずか十分の休憩時間が終わろうとするころに、担任の矢賀先生が教室へ入ってきた。これから他の教室へ授業に行くのか、脇に紙の束を抱えている。 「次は、選択授業だ。茶道は三階の和室、クラフトは五階の手前部屋、メイクは一階の職員室隣なー。間違えるなよ」  矢賀先生は、そう言うとさっさと出ていく。もうすぐ休憩時間が終わるころに、初耳な教室移動を知らされた私たちは、慌ただしく教室を移動した。 「なんでもっと早く言わないかな、あの人」  加納さんの不満なつぶやきが聞こえた。加納さんはなんの授業を選択したのか知らないが、両手で持つほどの大きさをした風呂敷包みを持っていた。ちらほらと同じような、風呂敷包みを持っている生徒がいる。  一方の私は、クラフトを選んだため、手ぶらだ。教科書もない。  五階の一番手前の教室は、ドアが開け放たれていた。クラスメートは中を覗き込むようにして、順番に入っていく。私も流れのまま、教室へ入った。そこには、講師専用のネームプレートをつけた、白シャツ黒スーツ姿の見覚えのある男性がおり。  今朝初めて見たときと同じ、柔和な笑みで皆を迎えていた。
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