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「じゃあ、ご職業はなんですか?」
「見ての通り、アクセサリー作家だ」
「稼げるんですか?」
「素人には難しいだろうな。祖父母の知り合いのコネもあって、リピーターがいるんだ。大体がオーダーだから、一つが高値で売れる。あとは、不定期で教室をしている。非常勤講師としての収入も僅かだがある。そのほかに、細々とした手にとりやすいアクセサリーを、京都のほうへ卸しているんだ。それも、まぁまぁな売り上げだな。あとは、息抜きに露店販売に出ることもある……これは、滅多にないんだが」
「手広いですね。そんなに作れるんですか?」
「いや。オーダーに関しては、ものによっては数日かかるしな。収入面で言うと、父が私に残した土地を駐車場として貸しているから、定期収入がある。言っておくが、ハンドメイドの量産はできない。手作りでないと、美しくはないからな。鏑木くんが来てくれてから、かなり助かっている。このまま、下準備や事務的な部分を頼みたい」
「……あのう、その件なんですが」
私がやや俯き加減に口をひらくと、先生は目じりをつりあげた。まだ何も言っていないのに、怒る気だ。でも、伝えておかないと。
「もうすぐ、一段階実習があるんです。実習自体が初めてなので、どんな感じかわからないんですけど。担任の先生が言うには、実習先へ行く途中で『学校やめます』って電話をして、姿を消した生徒もいるとかで。精神的にきついらしいんです」
「……ほう」
「帰ってからのレポートもあるし、これまで通りこれないかもしれません」
先生は、突然がしがしと頭をかいた。自堕落だが清潔感のある先生の髪は、フケ一つなく、さらさらだ。やはり、手伝いをする者がいなくなるのは、先生の予定を大幅に狂わせてしまうのかもしれない。
「なんだ、くそっ」
「すみません。お忙しいときだったんですね」
「違う、てっきり辞めるのかと」
「え。バイトをですか? 辞めないですよっ! 少し厳しくなるだけで、実習が終わってからはバリバリきたいです!」
体を乗り出せば、わかったわかった、と先生が宥めてくる。
「実習というのは、学校であるのか。今、実習先とか言っていたが」
「それぞれ決められた施設へ二週間、直接行くんです。私は特養に決まりました。社会福祉法人円城寺丸会って知ってますか?」
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