第二章 2、渡月は、須藤先生と一緒に暮らす

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「つまり、みこちゃんは先生の話題で盛り上がりたいんであって、親しくしたいわけじゃない、ってこと?」 「そんなとこかな。あ、誤解しないでね。本気で惚れたのーっていう人たちを否定してるわけじゃないから。私は、見てるだけがいいの。むしろ、身近なアイドルみたいに、話題にして盛り上がれたら、それが楽しいかな」  手が届かないから見ているだけ、とも取れる言葉だけれど。みこちゃんは、本当に石井先生との進展を求めているわけではなく、ただ話題の一つとして盛り上がりたいだけらしい。 「あ、変な顔してる」 「え」 「ほら、言ってみ」  みこちゃんは、私を見てにやにや笑う。一体、私はどんな顔をしているんだろう。頬に手を当てると、みこちゃんは「ほれほれ」と促してきた。  私は、言葉を吟味してから、口をひらいた。 「わいわい話すことが、楽しいの?」 「そうだよ」 「緊張しない?」 「なんで。だべるだけだよ」  みこちゃんは、ふと、真面目な顔をして、考える素振りをみせた。 「渡月は、いつからそんなに緊張するようになったの?」 「話すこと、だよね。えっと、高校のときには緊張してたかな」 「もっと前は?」 「……中学の頃は、少しだけ、自由だった気もする。でも、小学生のころは、やっぱり緊張したかな」 「うーん。なんでだろうね」 「臆病なんだよ、私。人の顔色ばっかり見て」 「他人と比べて自分の評価を気にしてる人たちより、ずーっとマシ。私、高校がそれなりに偏差値高いとこ行ったんだけど、他者より有利に立ちたがる人ばっかりで、教師もそれを煽るしさ。なんか、ギスギスしてる三年間で、精神的にしんどかったの。親は反対したけど、この専門にきてよかったよ」  みこちゃんは、何事もないかのように、自分のことを話してくれた。それに。私を否定も肯定もせず、ただ話を聞いて傍にいてくれる。 「みこちゃんは、本当にいい子なんだね。石井先生ネタにして遊んでるけど」 「ふはっ、渡月、一言多い! そういう黒いとこ、私嫌いじゃないよ」
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