3、須藤先生は、ちょっぴり優しい……かも、しれない

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3、須藤先生は、ちょっぴり優しい……かも、しれない

 自堕落な生活をしているくせに、着替えは毎日行い、食事も三食とっているから、休憩室のゴミは、毎日追加されていく。  バイトとして雇われて三日目。  やっと一段落ついた休憩室の片付けにほっと息をついた。  長い髪を無造作に後ろで結び、着ている衣類はジャージに近いもので、花の十代とは思えない過ごしだ。だが、ある意味気楽ではある。高校時代に興味本位でしたバイトは、衛生面から身だしなみ、挨拶まで厳しいところだったから。  私はまとめたゴミを休憩室の奥へ仮置きしてから、近くのコインランドリーへ洗濯物を取りに行った。アトリエにある洗濯機一つでは洗いきれない量だったので、コインランドリーへも持ち込んでいたのだ。  今日は、土曜日。  学校がなく、朝から掃除に着手していたこともあり、昼前には休憩室の掃除は終了。  さすがに疲れたと、洗濯物を百円均一で購入してきたカゴに分けて入れていく。下着はトランクス派らしい。恥ずかしくないのか、脱ぎっぱなしの下着を洗わせて。と思わなくないが、私自身は全くもって気にしない。 「おい、卑屈馬鹿」 「はーい」  今日のあだ名は、随分と素直だった。ここ三日、何かしら罵倒の言葉で呼び続けられており、当たり前のように返事をする自分が悲しい。  振り返ると、肩をごきごきさせながら作業台の椅子のもたれかかった先生が、私を見ていた。 「昼食は?」 「食べるんですか?」 「当たり前だ!」  そんなに怒らなくても。 「私が作るんですか?」 「買ってきても構わない、用意してくれ」 「キッチンはどこですか?」  よいしょ、と腰を浮かせた私は、目を瞬く先生を見て、嫌な予感を覚えた。 「……どこだったかな」  予想的中。遠い昔を思い出すような声に、私は心のなかで絶叫した。
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