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男がフラフラと席を行き来して周っているのは視野に入っていた。で、しかし目の前のセル、カタカタカタカタとキイボードを叩いてみるが全く反応がなく。泣きそうに目にじわりと涙が滲んで来たとき、背後から声と人の気配。「どうしたのー」と、柔らかで気の抜けた声。彼女、内心、きたああああ!こっちにも、と思うながらも「いえ、あの」とあまり言葉にならない。
「あーフリーズしちゃってるねぇ」と、また。腰を屈めた男。顎の下くらい迄の長い髪からふわん、とシャンプーのような匂いがして、顔の近さを確認したが、
さっさと男はパソコンを再起動させて、今度は動くようになったエクセルを開いてくれていて、彼女は窮地を救われ、涙は止まり、先程のシャンプーのような匂いは嫌ではないような気がしていたが男はもう、次の席に歩いて行った。男の髪は波打っている。
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