カトレア咲く窓

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雷の日はそわそわして落ち着かない。ある夏の日は雷が鳴り響いた。「カミナリさんは臍を取っていくんだぞう」幼い日に母に言われ、いい知れぬ怖ろしさに襲われた日のまま。未だに嵐や雷の時は独りで過ごせない。 部屋にこんなにも沢山のキティやメロディなどの猫や兎が所狭しとならび、ともすれば雷の光の中その沢山の目と彼女の目が合う…なんてことがあってもだ。彼女のヌイグルミは魂を持たない。彼女はヌイグルミのなかに魂を見い出せる性格の女ではないことが、こんなときに露呈する。そして彼女は近くに住まう母親の下へと雷雨の中、軽自動車を飛ばす。 部屋に沢山のヌイグルミを残して。 窓辺のカトレアが雨に打たれて濡れている。
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