風が吹く…

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風が吹く…

まだ俺がダーツを始めたばかりの頃に、どうやら彼女に出会っているらしい… その頃の俺のダブルスの相方を師匠と崇めているようで、当時もそんなに面識もなく話す事もなかった。 若い彼が酔って、飲み会から抜けて俺の店に来ていると聞いて、急いで来たらしい…けたたましく彼女が来ると店は賑やかになった。 なぜ若い彼と彼女がダーツをしだしたのか、そしてここに来たのか聞くと…数日前から彼女が昔やっていたダーツをネカフェで何時間も2人で投げて、シンプルにもっと投げたい!ダーツが楽しい!と思ったのがきっかけで、実は昔の知り合いが近所で店を開いてると彼女が話したからだった。 知っていて、なぜ彼女は来なかったのか…それは過去のトラウマがあったから…それは後に知る。 行きたいけど、行けない…投げてはいけないトラウマ…また投げている事が悪なようで、ダーツを握れないとまで思うほどに、彼女にとってのトラウマ…楽しかったのに、強くなりたかったのに、辞めざる得なかった。 それでも、若い彼の気まぐれな行動で彼女にきっかけが出来た… 「私なんかが来て、投げても大丈夫ですか?」遠慮がちに何かを探るように彼女は聞く。 当分、これといって人も来ない店だ…単純に来てくれるなら、ありがたい…そう思った。 それから彼女がいる事が当たり前になるなんて、この時は想像もつかなかったと思う。 久しぶりに人がいる…笑いがある… 自分以外の投げる音がする… 決して2人とも俺からして、上手とも言えないけど、ダーツを楽しんでる事に俺は嬉しかった…そう、そういう店にしたかった。 何だか風が吹き始めた気がした…
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