それぞれの想い

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それぞれの想い

それでも強くなれない事に彼女は苦しんでいた…毎日、練習しに来る事で俺と付き合ってるとか気があるとか言われ…真剣に上手くなりたいだけなのに、なかなか伝わらなかった。 それなのに、彼女はそれをネタにした…笑って、ネタにして…店の売りにした。 突然、現れた連日現れる彼女に興味を持った他の客が来る。 誰も来なかった日々が嘘のように…それでも俺は最初だけだと期待はしてなかったし、別に1人でも俺は俺の城を持ってるという事で、ある意味…どっかで満足していた。 だけど、彼女は毎日現れる…1人でいる時間が減り、彼女が来る事が当たり前になる。 ある意味、家族より長く一緒の時間を過ごす。人の心にズカズカと踏み込んでくる彼女が苦手で、元々お喋りが苦手な俺は静かに彼女に酒を提供しダーツをする日々… 俺と2人だけの時、彼女は大人しかった。 いつも美味しいと俺の作った酒を笑って飲むのに、グラスを片手に今日の彼女は静かに飲み干し、何かに悩んでいた。 何にそんなに怯えているのか…1人でいる事が不安で怖くて、そして…いつかまた追い出されて出禁にされてしまうんじゃあ…と恐れる彼女は、俺に正直に当時の事を話してくれるようになった。 ある意味…きっかけは、俺がスポンサーになっているプロの男の子との契約解除と出禁にしようかという俺の愚痴からなのだが…他の客からも言われていたり、トラブルもあったりで面倒くさかった…そんな愚痴を一緒に飲みながら話していると彼女は急にヒートアップした。 「チャンスをあげてよ!もっと話し合ってよ…人との縁とか、そんなもんなの?!ちゃんと話して分かってもらおうよ?!マルたんの想いや考え方と彼の想いや考え方は違って当然だし、それは伝えないと伝わらないよ!気に入らないからって、縁を切ることは簡単だけど、分かってくれるはずだって伝え続けて待ってあげるのが大人じゃない?!」彼女は必死だった…まだそんなに関わった事のない人の事なのに、偉そうに俺に語ってくる。 分かったような口を聞く年下の彼女に、俺はイラつきながらも、簡単に切られてしまった経験のある彼女の意見は説得力があり、納得している自分もいた。 「ここはマルたんの店だし、マルたんが決める事だけど…簡単に人を切り捨てるような店にならないで欲しい…」切実な彼女の願いだった…もう2度と来ないでくれと突然言われてしまった彼女にとってはきっと他人事ではないのだろう。
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