雑踏の中、わたしたちだけ。

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帰りの道中は人でごった返していた。週末のテーマパークに閉園間際までいたのだから仕方ない。わたしたちははぐれないようにお互いを見やりつつも、何となく3組に分かれていた。 それも仕方のないことだった。これは恐らく、仕組まれたトリプルデートだったのだ。気付いていなかったのはわたしと、綾汰(あやた)くらいだろう。ちなみに綾汰は、陽葵(ひまり)にガッチリ隣をキープされている。 そしてわたしの隣にいるのは、翔琉(かける)だった。これは全く想定外だった。とびきり優しく笑顔の似合う印象はあるが、彼の優しさは老若男女問わずに注がれるもので、自分に向けられるものが特別だと感じたことはない。皆の王子様で、誰かが独占するイメージもなかった。 だから、他の友人たちの目を盗んでわたしを連れ出した翔琉に告白されたとき、突発的事態に処理が追い付かなくて、とりあえず濁すしかなかった。 「ずっと好きだったよ、一花(いちか)。俺と付き合ってほしい。」 「…ありがとう。ちょっと、頭を整理させてください。」 気持ちが嬉しくないわけではなかった。でも、応えられるとも思わなかった。わたしは、同じくどこかで告白されているかもしれない、綾汰のことが気になって仕方なかった。
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