ピアニスト失格

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   でもまだオレも14歳だったから。逆らうわけにはいかなくて、まあじゃあ行きます、という運びになったということかな。  すごい先生の家は、メルヘンチックな緑の屋根に白いサイディングの木造の一軒家だった。 そりゃね。都会の真ん中だから仕方ないけれど、周りの家はいたって普通で、せっかくのかわいい家は場違いに感じたな。    防音設備の施してある狭い室内には、グランドピアノが2台並べられていた。   「今日はお時間を取ってくださって、ありがとう」   おばあちゃん先生は、かつての教え子にいつまでも優位に立ちたいのかな。そんな挨拶をした。 「いいえ。先生もお元気そうで」 「そうでもないのよ。寄る年波で膝が痛かったり腰が痛かったり」 「そうですか。じゃあ何か弾いてもらえる?」 すごい先生は、おばあちゃん先生の言葉を無視して、オレに言った。 「ごめんなさい。30分しかお時間をお取りできないので」 なんかイヤな感じ。この人とは合わないな、とオレは思ってしまった。
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