ピアニストではなくピアノ奏者へ

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ピアニストではなくピアノ奏者へ

   それからオレは個人レッスンのおばあちゃん先生のところで、コンクール向けではない、美しい曲や楽しい曲をたくさん習った。  それらには、ずっと封印していたクラシック以外の曲もあり、映画音楽やジャズ、ポップスまで多岐にわたり、おばあちゃん先生の知識の幅や広さに驚き、それまでの時間を悔やんだ。  こんなに幅の広い曲を知っているなんて、おばあちゃん先生はどんな人なのか。  クラシック音楽を極めるのも素晴らしいことだけれど、音楽全般を楽しめるということは誰にもできることではないから、ほんと、驚いたよ。  こうしてオレは勉強を続け、学年成績が80番前後だったのを、最終的には2番をキープするまでになり、念願の地元の最難関校に合格することができたのだ。  やればできる子なんだ、オレは。  高校時代は楽しかった。いい友達にも恵まれ、バンドを組みスポーツに励み女の子たちと遊び、恋もして失恋もして、たくさん笑って過ごした。そのせいで一浪したんだけれど。  でも後悔はなかった。小学生の頃に抑え込んでいた「普通の生活」を満喫できたのだから。
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