市民、惑う。

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 風景を見ながらボッーとしつつ、そろそろ名古屋駅に行こうかと思っていた時だった。  「ねえ? あそこなんか燃えてない?」  と、近くにいた女子高生グループの中の1人が風景の方を指さしながら仲間に言った。その言葉を耳にした私は、釣られてその方向を見た。  大きな吊り橋の向こう側にある赤黒い建物やパイプに覆われた製鉄所があったが、その一部の場所からいくつかの細い黒煙らしきものが小さく見えていた。が、それら細い黒煙は時間を追うごとに徐々に太くなっていき、ここからでも見える程の大きな黒煙が上空に黒い雲を形成していた。  「あそこ燃えてない?」  「火事だよあれ、火事火事!」  「大丈夫かこれ?」  フロアにいた人々も遠くに見える製鉄所の火事と巨大な黒煙に気付き、皆が南側の窓ガラスに向かってその風景を眺めていた。  ふと、火事を見つけた女子高生が言った。  「怪獣じゃね?」  「んなわけないでしょウケる~」  友達らしき別の女子高生が笑いながら否定した。  「とんでもない爆発だな……」  「逃げ遅れた人大丈夫なのか……」  「……怪獣でも現れたか?」  「確かにこりゃすごいよな……」  周りの人々も遠くの惨状を見守りながら話をしていたが――、  「海からビームでも撃ったか?」  「そんな訳ないでしょ」  「怪獣が破壊してるみたいだ」  「茨城に怪獣現れた時もこんな感じだったぞ」  と、何故か女子高生に続いて周りの大人達も怪獣について言及するようになったのだ。  そんな訳ないでしょ――そう呆れながら思いつつ、私は名古屋駅に向かう為エレベーターへと向かって行った。
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