王子キター!*

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王子キター!*

「待ってくれっ!」 と、制止の声。ん?この声は…。 「剣を引け聖騎士、余の顔を見忘れたか」 …どこの新さんですかね? どこの暴れん坊な将軍ですかね? 時代劇みたいな台詞で登場したのは、色素薄い儚げな男性です。 私あの人知ってますね。 あれ、あれ、あれだほれ、ヘタレ王子だ。 「ティロン───!? あれほど来るなと言ったのに…!」 ここで初めてイェルハルドの焦った顔を見ました。 攻撃してくるときは余裕の表情で、剣を突きつけられた時も一切、怯えや焦りなんてなかったのに…。 「駄目だよイェルハルド。ここで死んだら駄目だ。君に汚名を着せて死なせることなんか、出来やしない。余を守ってくれることは嬉しいが、ここで死のうなんて考えちゃいけない」 凛とした姿の王子様。そこに以前のヘタレでひ弱な姿は見受けられません。 相変わらず、ひょろりとした背丈で毛髪の色素薄くて、儚げな妖精にしか見えませんが、やはり彼は王子なのでしょう。彼の言葉は力強く、生気に溢れています。 ────と、ここまでは本当にそう思ったのですが、突如、王子は胸を抑え苦しみ始めました。 「…っ、生きてイェルハルド…余の分まで、君が生きて…臣民のために…罪を償わないと────」 声を出しながらもゼハゼハと、呼吸音が風切る音のようにヒューヒュー掠れてます。 「ティロン!────っ、またか?!なんで?治ったんじゃないのか?!」 イェルハルドは私の剣の下から這い出し、ティロン王子に近づきます。 苦し気に呻く王子を支え、「ティロン、どうして、どうしてお前ばかり苦しまなきゃいけないんだ…ティロン!」と、どうしようもない怒りまで込み上げてきたのか、普段のすまし顔なんかかなぐり捨てて、感情のまま叫ぶイェルハルドは、なんだか憐れです。 ティロン王子は病気なのかな? またってことは前にも同じことが起きたということ。 前の聖女旅での彼は、ずっと馬車に引きこもってたからよく分からなかったけど、もしかしてその時からもう病気だった? 一旦治って、また再発したのかなあという印象。 「ちょっといいですか? 俺は医者です。診察させて下さい」 篤史さんが名乗り出てくれた。さすがお医者様。てきぱきとティロン王子の前身を剥ぎ、手で触ってトントン(打診)したり、耳を胸に当てたり(聴診)している。 …ああ近い。近いよ。うううー嫉妬してたらいけませんね。あれは診察。診察です。私、平常心。がんばれー私やればできる子ダヨー。 私がイライラしてる間も、篤史さんが医者としてイェルハルドと会話してます。 「気胸ですね。左の呼吸が弱い。おそらく、鼓音がおかしかったこの辺り…肺蓑に穴が開いてます」 「城の侍医にもそう言われた。だが、それは治ったと…」 「再発したんですね。気胸の原因は断定できません。外的ショック、心因性のもの、ドラッグや嗜好品による内臓への負担など、様々な要因が考えられます」 「多分、ストレスで…彼はいつも自身の立場に悩んでいた」 「王子ですものね。王様があれでは…あのような環境は心の病によろしくない────」 「ぐッッ、ごほっ…ッ!」 王子が吐いた。それは赤く濁ってて素人の私が見ただけでもヤバイものとわかる。 「────いけない。肺が虚脱して新生血管が切れたみたいです」 「ティロン…?! いやだ。死ぬな。ティロン、ティロン──!」 取り乱すイェルハルド。 篤史さんは冷静に「ツヴァイアさん」と私を呼び、イェルハルドを指差す。 …それ邪魔なんですね。はい。どかします。 私はイェルハルドを拘束。 「何をする聖騎士…!」とかって暴れる暴れる。 意気の良い魚がピチピチ跳ねてるようデスヨ。 しょうがないから鎮めるために急所を握ってやりました。もちろん服の上からです。直になんか触れるもんか。 「ああ゛───?!!…うふ~ぅぅ…」 ふっ。大人しくなりました。 さすがビッチな魔導士の体。 急所に優しく刺激を与えてやれば快楽には抗えないようです。 もみもみしたり、くにくにしたり、篤史さんも喜んでくれるツヴァイア様の経験から学んだ私の性テクで、その体に悦びを教え込んであげます。 篤史さんは呆れた顔で私を見ながらも、神子の癒しパワーを発揮してティロン王子に緊急手術を施しました。 篤史さんの手の平がビカビカ光れば、ティロン王子のゼハゼハ呼吸は徐々に落ち着きを取り戻し、光輝く神子パワーの放出が終わった頃には王子の顔色も良くなり、そのまま篤史さんの膝上で寝てしまったようです。 膝枕、だと…? ────うらやまけしからん! 「いつまで、それ揉んでんです?」 ジト目で私を睨む篤史さんですが、王子の頭を膝に乗せて白くてさらさらの髪を梳いてあげてる篤史さんに言われたくないのですよ。 ムカッとした私が、ビッチ魔導士のお尻に人差し指ブッ刺したのはしょうがない行動です。 手袋の布越しですが、いきなりやられたらヒギィ!らめぇ~にもなるでしょう。 ごめんビッチ魔導士。私のストレス発散に付き合っておくれ。 「篤史さんこそ、他の男を膝枕とか、やめてくれませんかねえ」 「おや。患者さんに妬いても意味ないですよ。それより、つば沙さんは欲求不満のようだ。男に飢えてらっしゃる」 ムキー!仕方なくしてるのに、そゆこと言う?! 「本当に飢えてるなら、ここにもう私のぶっ込んでますよ。でも私のは篤史さんを可愛がる為のものですから。篤史さんにしか使わないんですからね。だからこれは前の、殺された意趣返しなんですう」 そう言いながら私はイェルハルドいぢめを続け、わざと痛くしたりして責めに責めてあげた。 だが、ふむ…こんなもんにしておこう。 ビッチの体には物足りないだろうが、このまま放置というのもお仕置きになりますよね。 ぴくぴく余韻に震えて地面に転がるイェルハルドを見下ろして、私はハンカチで手を拭いました。 「憐れな…」 篤史さんから同情の視線を送られるイェルハルド。 あ、なんか、そんな顔するのにもカチーンときた。 私たちをハメた鬼畜魔導士になんか同情しないでほしい。 そんなこと言う口はこの口かー!という激情のまま、篤史さんに激しく接吻。 「────っ、ツヴァ…! んんーっ、ん、んふ…っ、」 この後、嫌がる篤史さんを祭壇前まで連れて行き、私(聖女)の遺体が入った石棺の上で激しくしちゃったのは───ご想像にお任せします。
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