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転生した私は褒美をもらう
気づけば王都に戻って来てました。
旅の出発地点です。
「ツヴァイア・ローゲルトレ」
呼ばれてハッと面を上げれば、そこには暴君な王様。
何度か同じ名前で呼ばれ続けたのは、私がボ~としてるからでしょうね。
「そのような愚鈍さで、ようも魔獣を討ち滅ぼせたな。褒めて遣わそう」
褒められた気がしない褒められ方で、おそらくけなされてるんだけど、このチキン騎士はデフォルトでこうだから私も特に反応せず、じっと待つのみです。
…それより今、王様なんておっしゃった?
魔獣を討ち滅ぼした?私が?
てか、チキン騎士ことツヴァイア様が?
横目で、ちらっと視界の片隅に映るビッチ鬼畜魔導士が「そういうことにしとけ」と視線で訴えてきている…気がします。
「聖女を助けられなんだのは残念だった。だが、平和を脅かし人々を苦しめていた悪の魔獣を滅ぼせたのだ。あの世で聖女も喜んでおろう」
待て待て。聖女ここにいます。喜んでません。むしろ、こんな状況になって戸惑っております。
心の中では焦って戸惑ってるのに、騎士ツヴァイア様の顔の表情筋は硬いらしくピクリとも動かない。
そういやこの御方いつもこうでした。
むっつりした顔で何考えてるか分からなくて、戦闘になると逃げるからホントただのチキン。
顔はいいのに。こうして無表情でいるシビア顔は彫が深くてゲロハンサム。まるで男優のよう。
そう、ツヴァイア様の見た目はビックリするくらい外タレ風イケ顔なのです。
柔らかそうな細い髪はクリーム色。澄んだ青空のような蒼瞳。顎髭。揉み上げは太く、眉毛も太い。
前世(?)の地球にいる人種だと北欧の人に似ています。
もし告白されてれば、お付き合いを…することはないですね。私の好みから外れてますし、何より美形すぎて一緒にいると気後れすると思います。
そんなイケ顔ツヴァイア様の顔をニコリともさせないで、私は王様を見据えました。
この暴君めが────。
私の内心の暴言を知ってか知らずか、王様はちょっと怯んだように肩を竦めて、それから大仰な仕草で足を組んでから、玉座に深く座り直してます。
こいつヘタレだな。
さすがヘタレ王子の父親ですわ。ヘタレ王です。
ヘタレ王は自分の息子ヘタレ王子の話題は一切出さず、ツヴァイア様に褒賞を与えてから奥に引っ込みました。どうせ後宮へ、40人もいる側妃たちとアハ~ンしに行ったのでしょう。
横暴な上に好色とか救えねえわ。
宰相やら側近やら身分の高い人たちも、あー終わった終わったとばかりに帰って行きます。
そんな、お疲れさんで~すな中で、ビッチ魔導士が近づいてきて、私に何かを手渡してきました。
「こいつをやるから、これからも俺に口裏合わせろよ」
口止めですか。
渡されたものは鍵ですね。
鍵は、王様から褒賞にと賜った王都内の屋敷に帰ったら使い方が分かった。
家の玄関の鍵であり、居間のテーブルに堂々と鎮座してた大きな宝石箱の鍵だったから。
宝石箱の中身は金銀パールダイヤなどの財宝がうなってました。
これだけあれば一生安泰な金額です。
騎士として食いっぱぐれても一生困らず生きていけるけど、栄えある『聖騎士実動部隊』の副部隊長職まで授かってしまったから、これからは騎士として過ごさなければなりません。
この世界に召喚され死んで生まれ変わってからの、怒涛のありえない日々を走馬燈の如く反芻しながら、その日は眠りに就きました。
広いお屋敷の広いベッドなのに、なんだか寝心地悪かったです。
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