3人が本棚に入れています
本棚に追加
お母さんは視線を珠ちゃんに向けて言った。珠ちゃんは真剣な表情で頷く。確かに今私たちにできることは珠ちゃんを哀れむことじゃなく、お殿さまの生まれ変わりを一緒に探して会わせてあげることだ。
「珠ちゃん! 頑張ろうね!」
急にやる気が出てきた私は珠ちゃんの手を握った。珠ちゃんはびっくりしたように目を見開いたが、すぐに笑みを浮かべて頷いた。握った手に力がこもる。
「ありがとう。誰かと一緒に殿の魂を探すのは、こんなにも頼もしいものなんだな」
その嬉しそうな表情にはっとした。珠ちゃんはずっと一人で旅をしてきたと言っていた。けれど珠ちゃんだって最初から一人だったわけじゃない。親がいて、お付きの人がいて、殿がいて。人より長く生きてきた珠ちゃんは、身近な人との別れをたくさん体験してきただろう。その悲しさは私には想像もつかない。
知ってる人のいない世界で珠ちゃんはただ一人、殿さまの魂だけを求めて。……ああ、そうか。だから珠ちゃんは、殿さまじゃないと駄目なのかもしれない。それは唐突にすとんと私の中に落ちてきた、納得できる答えだった。
最初のコメントを投稿しよう!