1-1. あめふるはこにわ

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1-1. あめふるはこにわ

 大きな南向きの教室の窓には強く雨が吹き付けられていた。  分厚く重たい雲は秋の色よりも冬の色の方が濃いように思える鈍色。今にも雲ごと地面に落ちてきそうだった。  先日、例年よりも少し早く初雪が降りてきた。  大抵初雪の後は2回くらいその寒さが緩むのだが、その寒の緩みも終わりかけで、コレだ。  哀しいほどに、空しいほどに、冷たい雨だ。 「なーんにもなくて、つまんないよねー。11月のアタマってさー」  昼休み。購買から買ってきた大きなメロンパンを頬張りながら、クラスメイトの高島(たかしま)神流(かんな)がため息交じりに吐き捨てた。  神流は、向かいの席の椅子を逆向きにしてこちらへ身体を向けて座っている。  それは一向に構わないのだが、足を伸ばしてばたつかせるものだから、少々困る。
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