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「……」
「あ、あの、睦美さん?」
電車が来るのに立ち上がりもせず、待合室でじっと俯いた彼女を当然訝しむ。
その顔は長い髪で隠れてその表情は伺い知れない。
「そうね」
電車が来て、たくさんの人達がのそのそと乗り込んだ。
ピシャリと閉まった鉄の乗り物がゆっくりと滑るように線路を走り出した頃、ようやく彼女が顔を上げた。
つん、と筋が通った鼻が綺麗だな。美人は横顔も美人なんだよな……なんて考えていると。
「彰君!」
「え? ……わっ、と、なっ、なんですか!?」
突然俺の手を手を引っ張られて、強引に立ち上がらせた。
「今日、学校休んじゃいなさいよ」
「え? えええ!?」
いきなりの提案に俺はきっと目を白黒させた、間抜けな顔をしていたと思う。
「いいでしょ」
「む、睦美、さん……」
彼女、実は俺より少しだけ背が高い。
だから立ち上がると俺が若干見上げる感じになるのが少し気になる。
(ま、でも俺もあと少し伸びる……かもだし)
「……今から、うち来ない?」
そっと囁かれた言葉に、俺は言葉無く頷くしかなかった。
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