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瞳
「つまり、その後輩君は私のストーカーをしている可能性があるって事?」
頬杖ついて彼女はそう訊ねた。
……ここは睦美さんの部屋だ。駅からそう遠くもないマンションに一人暮らししていた。
学生の一人暮らしにしては広い所じゃないかな。
俺は実家暮らしだし、一人暮らしの部屋っていうイメージはよくわかんねぇけど。
「はい。多分、ですけど」
俺が大輔のこと、彼女に打ち明けたのには理由がある。
部屋に入って最初に目に入った本棚。
数冊のハードカバーの小説や雑誌、あと一冊だけ古びた本。
その本に見覚えがあった。
(あの日、古本屋で……)
そう。一緒に行った古本屋でアイツがレジに持っていった本にすごく似ているんだ。
文庫本で表紙は日に焼けて少し変色しているし、カバーや辛うじて残っている帯も所々裂け目が見える。
背表紙の上の方についてる紐、確か……そう『スピン』だ。大輔が言っていた気がする。
あれも毛羽立って細くちぎれそうだった。
動揺を抑えつつ、俺は睦美さんに訊ねる。
『この本、好きなんですか?』って。
そしたら返ってきた言葉。
『……ああ、それね。もらったのよ。高校生から』
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