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「……その本をもらった時のこと、話して欲しい」 切羽詰まった俺の声に、怯えてしまったのか目を見開いて黙る彼女。 (俺は別に怖がらせたい訳じゃない。ただ守りたいだけなんだ) もどかしいようなムズムズとした感覚が、背中から足先に抜ける。 ちゃんと説明しなきゃと思いながらも口は上手く回らず、接続詞ばかりが増えていく。 (ああ、俺ってこんなに会話下手だったか!?) こう見えて別にコミュ障じゃねえのになぁ。 きっと睦美さんを守りたい気持ちと、後輩である大輔を庇いたい気持ちが拮抗しているんだ。 「特に……なんてことないわ。ただ一度だけ、あの男子高校生に駅の階段を登るのを手伝ってもらったのよ。その時、少しお話したの……ちょうどこの本を持っていたから話題に上った、それだけよ?」 肩を竦めて首を傾げて、記憶を辿るように話す彼女。 とてもこの事柄に不信感を持ったようには思えなかった。 「それは、いつの事?」 「そうね……私と彰君が出会う、ひと月ほど前の事ね」
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