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大きく上質なベッドは大きくは軋まないらしい。 「彰君、こういうの慣れてないでしょ?」 「え? ああ、は、はいっ!」 確かに慣れてない。その、童貞だし。 ベッドの端っこに座った俺を、見て睦美さんは困ったように笑う。 「そんな固くならないで。取って食おうなんて気はな無いから、ね」 「と、と、取って食うなんて……」 どっちかと言うと食うのは俺の方、いやなんでもない。 「……ま、私も大した経験はないんだけどね」 そう言って肩を竦める姿に少しホッとした。よく見れば彼女だって緊張してるのか、視線は外し気味だしさっきから髪先を手でクルクル弄っている。 (なんだ俺だけじゃないんだ) そう思うと、より一層彼女が愛しく思えてくる。 俺は僅かな衣擦れと決意と共に彼女の隣に腰を下ろした。 マットレスのスプリングが微かに唸って、俺と彼女を受け止める。 「睦美さん」 「……」 もう一度名前を読んだ。そして彼女の膝の上の手と、自分のそれと重ね合わせる。 勿論自分のズボンで一度手汗拭いてからだけど。 「あ、あの」 ツンと鼻をついたのは化粧品の香りだろうか。 化粧品と言えば自分の母親のものくらいしかイメージ無いけど、そんなに悪い匂いじゃないな。 少し明るい色の瞳までよく見える距離まで身体を寄せてみる。 (め、目ぇ閉じて、くれねぇかな……) じっとこちらを凝視する二つの瞳が、心を見透かそうとしているようで少しばかり気まずい。 「彰君」 「は、はいッ!」 「……目、閉じて?」 (先言われた) やっぱり年下で童貞の俺がエスコート出来ないか。 うん、まぁいいか。 俺はある種の覚悟を決めて目を閉じた。
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