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温
……もう覚えてないだろうな。
オレがこの町に引っ越してきたのは十年前。
両親の離婚という最悪の形での転居。転校もしなくちゃいけないし、慣れない土地での生活も待ってた。
憂鬱なんてもんじゃなかったよ。
そんな時、出会ったのが彼だった。
二階の窓から外をぼんやり眺めていたんだ。
一層のことここから飛び降りたら楽になれないかな、いや無理か。高さがたりないな……なんて考えながら。
そしたら向こうの道を、数人でキャッキャッと走って行く同じ年頃の子達がいたんだ。
(あー、こいつら。今降りて見たら、きっと自分たちが世界で一番楽しいって顔してるんだろうな)
って漠然と思った。
多分羨ましかったんだろう。でもどう頑張っても今のオレにはこんな楽しそうな世界に入る自信はなかった。
今思えば、どんだけネガティブなんだよって思うよ。
でもさ、オレだけ母に捨てられたから。
俺には両親と妹が二人いた。双子だ。
それはそれは可愛くてさ、3歳下の彼女達を精一杯可愛がってきたつもり。
母の手伝いも頑張ったし、妹達の面倒もガキなりにやったと思うんだ。
……でも父親が浮気して離婚して。
母が連れて行ったのは、妹達だけだった。
つまりオレは置いて行かれたってこと。
歪まない方がどうかしてる。なぁ、そうだろ?
でも歪んだままオレは父親に連れられ、共にこの町に来た。
幸い金には困らなかったがこんな状態だ。
そうしてあの日に戻る。
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