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押し問答していると。
「うわっ!」
「あっ!!」
じっとしてように見えた蝉が突然バタバタバタッ、と羽をばたつかせて悶え苦しむように暴れだした。
ジジジッ、ジジッ! という不快感しか産まない音ともに。
「ヒッ……」
さすがに気持ち悪かったのか、乗せてた手を宙にはためかせる。
蝉はそのまま空に放り出されて、上手く舞い上がった。
「うっ……」
「ウゲッ! こいつションベン引っ掛けてきやがったぞっ」
そう。イタチの最後っ屁さながらの抵抗や復讐だったわけだ。
オレは巻き込まれた被害者だけどさ。
「……」
「……蝉って、すげぇな」
(えええ、そこ?)
唖然とした沈黙の後、ぽつりと言った彰の一言がなんとなくオレの笑いのツボに入った。
「ふふっ、はははッ! あははははッ……」
「ンだよ……ぷぷっ、ふふ、はははっ」
「わ、笑いすぎ、ふふふ、はははっ!」
「お前、こそっ、くくっ、ははっ、あーはっはっ!!」
それから数分後。玄関先で小学生二人が腹を抱えて笑い転げるという異様な状態を、近所の人が見て怪訝な顔をするという事態に。
「ふぅっ、ははっ、はぁ……お前、おもしれぇな」
「ハァ、ハァ、くっ、ふふっ……君には負けるよ」
笑いすぎでお互い涙滲んでた。
傾いた太陽が、まだ目に痛い8月の事だ。
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