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嘘
日差しが和らいで、風がよく吹き木々を揺らす。
汗を拭う事が少なりもう夏が終わりか、と過ぎた季節に想いを馳せる。
夏の間は騒々しく鬱陶しいその声が聞こえなくなると、それはそれで寂しく感じるものらしい。
「油断大敵!!」
後ろからに大声に振り向く暇もなく、背中に一撃。
「ぐっ……!」
思わずよろける足を踏ん張って耐え、前のめりに呻きを上げる。
「ハッハッハッ!!」
次に浴びせられたのは、まともに腹を立てるのもムカつくくらい清々しい笑い声だ。
犯人はもう分かってる。充分すぎるほどにね。
「……朝から元気っスねぇ。幼児かアンタは」
「うるせぇよっ!ダルそうに歩きやがって」
茶九 彰。同じ高校に通う先輩で幼馴染。
そしてオレの片想いの相手。
(あー、今日も可愛い)
ずっと前から、好きで好きで仕方なかった。
表面上は、必死で繕ってむしろ『ウザイ先輩を疎ましく思う後輩』って感じ出して。
本当はそれとなく先輩の事尾けたりして、少しばかりストーカーっぽいことしてたんだよね。
高校だってもちろん同じ所に決めて。
彰の方から話しかけて来てくれた時、凄く嬉しかったなぁ。
「……ほら行くぞ」
「先輩、一緒に行ってあげても良いですよ?」
「半端なく上から目線だなッ!!」
(ツッコミのテンション高め、可愛い)
あー、そういえば。
カノジョ欲しい欲しいとほざき始めた時の心の痛みは最悪だったなぁ。
『カノジョ』って言うことはあれじゃないか。
男のオレはお呼びじゃないってこと。
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