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言っとくけどオレは男が好きな訳じゃない。彰以外の男と、なんて考えだけで絶対無い。 彼だって同じだ。女が良いのは分かってる。 だからこそ、こんなに拗らせて来たわけだ。 おまけに行動力は人並み以上だから、やたら女に絡む絡む。 ストーカー……いや、見守っていて生きた心地しなかった。 できる限りは事前に排除してきたけど、オレだってそんなに手荒なことはできない。 もう考えあぐねた末に、山都 睦美は誕生した。 彰の好みの女に懸命に近づけて、果ては親父の恋人に相談してさ。 まぁ、その彼女が本物の『山都 睦美』さんなんだけどな。 彰には嘘ついた。 オレと山都さんには健全な関係しかない。女装も彼女仕込みだ。 じゃあオレの目的はなにか? ……ノープラン。目的なんか無くて、ただ彼にカノジョ作らせたくなかっただけだ。 見切り発車の無謀で無計画もいいとこだよな。 でもオレの歪んだ頭と心じゃそれしか浮かばなかったんだよ。 すぐに彰が女装のオレに食い付いて夢中になって、どんどん苦しくなった。 偽物の『山都 睦美』にムカついて嫉妬して。やっぱりオレが『鳥海 大輔』じゃなきゃダメだってなって……。 手錠までかけた。服も脱がせたし。 というか、完全にネタばらしするまで気づかないとか、どんだけ純粋で馬鹿で可愛い人なんだ! ……結果、全部吹っ飛んで何にも出来なかったよ。 キスすら。あ、首筋と額にはしたけど。 やっぱりオレとして、ちゃんと恋人としてしたかった。今となっては夢のまた夢だろうけどさ。 あの後手錠外して必死で謝った。そしたらあの人、笑いながらなんて言ったと思う? 『腹減ったな、飯行こうぜ』って。 出会いを覚えていてくれたのもビックリしたけどさ、このいい人っぷりも泣けた。 オレはこんなに可愛くて優しい人を力づくで犯そうって思ってたなんて。
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