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「着いたぁー」
ぐっと伸びをしたテアの先に、水面に月を揺らめかせた、深い青色のアニマの泉が広がっていた。
「ここで、何をするんだよ?」
サミが小さな樹の下に土で錬成したベッドを創ると、背中のリタをゆっくりと降ろす。
「虹の石に命を吹き込むの」
「虹の石?」
「命を吹き込むって?」
テアと僕が同時に声を出し、サミは泉に向けた目を眇めた。
「虹の石なんて聴いたことない」
イリスは泉のほとりまで歩き進めると左手を泉にかざした。
カエルムの丘で見えた銀の糸が、今度はハッキリとイリスの指先から現れて、水の中へと沈んでいく。
「イリス……何……してるの?」
僕の声に無反応のまま、イリスは何かを呟いている。青黒い水の底から光が浮上してきた。
「綺麗……」
テアが目を輝かせる。
水の雫を滴らせながら水面から現れたのは、正八面体の虹色に光る鉱物だった。
「これは一体……」
息を飲む僕の目の前でイリスが微笑む。
「七色の光を結晶化させた虹の石よ。この石を使えば街を救えるかもしれない」
「どういうこと? どうしてそれがアニマの泉に……」
「私の母が、泉に沈めたの」
なぜイリスの母親が?
イリスは一体何者なんだ。
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