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「ルネ……」
隣で火の入ってないランタンを抱えたテアが不安に満ちた表情を僕に向けた。
長いブロンドの髪と同じ色の瞳が、ランタンの灯りみたいに揺らめく。
「大丈夫だよ」
一番年上の僕は、動揺を悟られないように
ゆっくり唾をのみ下す。向かい合ってしゃがんでいたサミに合図を送る。「今すぐみんなに伝えなくちゃ」
潜めた声にサミは小さく頷くと、一緒に連れて来た幼い妹のリタの手を握った。
「いいか、リタはテアと一緒にここを出るんだ。出たら直ぐにばあちゃんが住んでる北の村に行け。そしてみんなにこの事を伝えるんだ」
街のみんなに信頼され、いつでも幸せを願ってくれているコポリ神父達が、そんな縁起でもない冗談を言うとは考えられなかった。
「魔法の使えない小さな子達が、街からいなくなったのはきっとコポリ神父の計らいだ。たぶん街の外に逃がしてるんだ」
サミの黒い瞳が訝しむように細められた。
「それじゃあ俺達は……」
「僕たちは……街から出られない」
そうだ。
あの子達と違って、僕たちはこの街から出ることが出来ない。
奥歯を噛みしめた時、ぼやりとした灯りが背後から差し込んだ。
「ルネ!!」
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