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ステラ祭り
南の空に赤い星が輝き、ブルーベリーの収穫が始まりだした頃、街外れに建つ古びた教会で大人たちが夜ごと集会を開いていることに気がついた。
そして、その頃から魔法の使えない小さな子たちが次々と姿を消していた。
だけどその事について話そうとする度、孤児院のラステル母さんはあからさまに話をそらすし、掃除夫のマグヌスさんに詰め寄っても、笑って誤魔化される始末だ。
魔法を教えてくれるマイア先生でさえ、「また今度ね」としか言わない。
だから僕たち四人は教会に忍び込むことにした。
今日は年に一度、願い事を書いたランタンを夜空に浮かべるステラ祭り。
その準備で買い出しに出かけた馬車通りの路地裏で聴いたんだ。
「今夜大事な話がある」
と司祭がコポリ神父に耳打ちしていたのを。
陽が落ち、空が深いアメシスト色へと変わる時刻。街中がお祭り騒ぎの中、僕たちはランタンを手に、教会内の側廊に立ち並ぶ柱の陰にこっそりと隠れた。
かくれんぼでもしているみたいに、息を潜めて笑いあっていたのはほんの数秒。
祭壇前に立つ司祭とコポリ神父の声に、僕たちは瞬きするのも忘れた。
「二日後に、この街は消える」
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