第六章 不思議少女と呼ばれて

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 顔も名前も知らないその人を好きになっていた。高校生の恋愛なんて都市伝説だと決めつけていた私が。何の手がかりもなかったけど、その人は新入生対象の部活動紹介のときに体育館の壇上で話していた。その人は門倉憂樹という名前の二年生だった。自分が非リア充だという自覚があるから、イケメンとつきあいたいとかそんな図々しいことを思ったことはない。憂樹先輩が実際どんな顔でどんな人なのか再会するまでいろいろと想像していたけど、リアルな憂樹先輩は私の妄想をはるかに超えていた。  男子なのに美しすぎてドキッとした。いわゆるイケメンというのとは違うかもしれない。見た目は男性的ではなく、女子と見間違えるくらいのかわいらしい感じ。それなのに身長は180センチ以上ある。背が高くて顔はかわいらしい。その存在感といったらファッション雑誌に出てくるモデルさんたちに全然負けてない。普通の人でよかったのに。太陽と宇宙の塵くらい釣り合ってないのは分かってるけど、私はもう自分を止めることができなかった。  幽霊部。何をしてるか想像できない、それどころか入部したら変な子扱いされて下手したらいじめられそうだ。それでも私は憂樹先輩が部長を務める幽霊部に入部した。  覚悟していたとおり、幽霊部に入部して学校でも家でも変な子扱いされるようになった。私は麗子という名前だからクラスメートには〈幽霊部員の麗子さん〉と呼ばれている。私は自分が変な子だとは思わないけど、自分でも不思議だなと思う。幽霊部に入部して私は幽霊が見えるようになり幽霊と会話できるようになった。憂樹先輩に比べればまだまだ未熟だけど、幽霊の悩みや苦しみを聞いて成仏させてあげることもできるようになってきた。  六月、入部して三ヶ月。私は相変わらず先輩に片想いしている。先輩は、死んで幽霊になってしまった元カノの後藤未来をまだ愛している。それでもいいと思っている。それくらいなんだというのか?  もし先輩が死んで幽霊になったとしても、私も変わらず先輩を愛してみせる。先輩が未来を愛してるのに負けないくらい、わたしだって憂樹先輩を愛してるんだ!  幽霊は成仏したらこの世からいなくなる。私の今の夢は未来を成仏させて、憂樹先輩の恋人になることだ。
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