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牛若警部は、顔を伏せて、震えながら目の前に座っている近松京一を見ながら、考えを巡らせた。 日立の妻・敦子と近松がデキていたのではなく、これが近松のストーカー的な横恋慕だった場合、敦子と近松が共謀して日立を殺したという可能性は低くなる。 今度は、近松が、横恋慕している敦子を裏切り、蔑ろにし、苦しめている夫の日立に恨みを抱き、単独で殺人を犯した可能性が高くなってくる。 目の前で怯えきっている近松を見ながら、牛若はもはや近松が殺しの件を観念しているように見えた。 やはり近松が日立を殺したのだろう、と牛若警部は確信した。 「単刀直入にお聞きしますが、近松さん、あなたは、ご自分の罪を早く認めた方がいいんじゃないですか?」 そう聞いても、近松はうなだれて、黙ったままだった。 「自白ということなら、情状酌量の余地もあります。早く正直に話した方が罪は軽くなりますよ」 牛若警部は静かに、諭すように、そう告げた。 しばらく取調室に沈黙が続いた。 だが、不意に、近松がそれまでうなだれていた顔を、力なく牛若警部の方に向けた。 そして微かな小声を発した。 「はい…」 蚊の鳴くような声だったが、近松ははっきりそう言った。 「罪を認めるんですね?」 「はい、申し訳ありませんでした」 近松は頭を下げながら、そう口にした。 牛若警部は、そのまま穏やかに、近松を見守った。
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