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都内中野区にあるT大学4年生の公一が、そのアパートのことを知ったのは、同区内にある自宅マンション近くの公園で会った、奇妙な初老の男の名刺からだった。
自宅で看ていた母が、病院で他界してから1週間後の土曜日……
公一は寂しそうにベンチに座っていた。
いつ、何処から来たのか、ある初老の男が近付いてきた。
上下黒のスーツ姿で白い髭を生やした、なんとも奇妙な雰囲気の男だった。
彼は公一の傍まで来ると、
「あなたの悩み事は色々あるでしょうが、今の悩み事を解消できる場所なら、
ありますよ」
「……?」
公一は無視して立ち上がり、行こうとした。
すると、その男は、
「そうですよね。そんな事をいきなり言われても、半信半疑でしょう。
ですが、だまされたと思って、一度ここに来てみてください」
その男は、名刺のような物を彼の手に渡すと、去って行った。
公一は、その名刺をポケットにしまうと、帰宅した。
夕食後、テレビを見ていたが、しばらくしてから何気なく、その名刺を見てみた。
そこには、筆で書いた感じで、
『満月荘 管理人』
その下に所在地の住所があったが、都内の北西方向の街で、よく分からなかった。
更にその下には、
『スマホ、デジカメなどの撮影器材は、ご遠慮ください。
雨天でも構いませんが、必ず水曜日の夕方にお越しください』
という注意書きがあった。
彼は怪訝に思いながら、東京都の区分地図を出してきた。
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