小村十造の軽挙

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「まずはタービンを用意せねばならぬ」  小村は工学の知識を持たない。  ゆえに、小村は発電に必要な装置を、何処ぞで仕入れて来なければならなかった。  そもそもタービンとはなんぞや――というより、発電に必要な装置は「タービン」で合っていたろうか。  小村は西の生まれであったため、幼少期より、タービンとタージンを言い間違えることが間々あった。  また、折悪く彼の父方の伯父は妙ちきりんな駄洒落を好む性質(たち)であり、酔っ払うと脈絡もなく「タービン胸いっぱい」等と放言し、一人笑いをすることすらあった。  胸いっぱいはタージンですらない、というのは小村の父が指摘していたことだが、では実際は何の胸がいっぱいになるのか、小村はついぞ知ることのないまま育ってきた。  仮に言葉が「タービン」で合っていたとして――発電に使うのは、本当にタービンだっただろうか? 「何もかも、わからぬ」  愚にも付かない。馬鹿馬鹿しい。  小村の気分は深く沈み込んだ。  この沈み込みを利用して位置エネルギーを得、発電することは、出来まいか。  その晩、小村はアマゾンで小型のタービンを注文した。
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