自信のつく薬は男に飲ませるな

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自信のつく薬は男に飲ませるな

「みのる~、早く~、遅れるでしょ」 「ああ、待ってよ~」 女子学生とも子は、男子学生みのるより先に走りつつ後ろを振り返って様子を確認していた。 「全く。あんたが早く起きないから私が起こしに来てあげてるんでしょ」 「いいよ、先に行ってて」 「だめよ、ほら」 「おいおい、おっとと」 とも子はみのるをお姫様だっこした。 「ほら、鞄を落とさないでね」 そして走っていった。しばらくして学校に到着し、とも子はみのるを降ろした。 「ここまで来たら大丈夫ね。それじゃ」 そう言ってとも子は去っていった。みのるも自分の教室まで歩いていった。 お昼休み。 3人の女子学生が話している。 「もうすぐ中間試験、このあとは文化祭ね」 この、れい子の言動に対し、サチとマユが返答した。 「私、今度のテスト、点取れるかどうか不安なのよね。特に世界史。れい子はクラスで2番だからいいよね」 「テストはともかく、次の時間、体育だし。私バレーボール苦手だわ」 「2人とも、情けないこと言うんじゃないわよ」 れい子は文句を言った。そして続けた。 「ところで、実は、あんた達のために持ってきたものがあるのよ」 れい子は、自分の鞄の中から何かを取り出し、机の上に置いた。 「何これ。飲み薬の瓶みたいだけど」 「私、薬は好きくないし」 サチとマユがそれぞれ言った。れい子が説明する。 「大丈夫よ。副作用とかはないし、水なしでも飲めるようになってるし。私の姉がとある研究所に勤めていて、友達にテストしてみてと頼まれてるの」 サチが瓶のラベルに書かれている大きな文字を見る。 「エナジニール?」 「ちゃんと説明書きも読んでね」 れい子に言われて、2人はラベルにある小さい文字の文章を読んでみた。いくつかある文の中の1つに、マユは注目した。 「男の人は飲まないように。男の人に飲ませないように。何これ」 「まあ書かれてる通りよ。必ず守ってね」 「は~い」「はい」 ちょうどそのとき、1人の男子学生が教室に入ってきた。 「あれ、みのる。どうしてここに」 教室の端のほうに座っていたとも子が気付いた。みのるは答えた。 「英語の教科書持ってる?」 「え、忘れてきたの。忘れ物がないか前の日に確認するようにいつも言ってるでしょ。はい、貸してあげる」 「ありがと」 そう言って、みのるは教室から去っていった。 その様子を見ていた3人のうち、サチとマユが切り出した。 「あんた達仲いいね。恋人同士みたいで」 「いつ結婚するの?子供は?」 それに対し、とも子が反論する。 「変なこと言わないでよ。高校生がそんなことできるわけないでしょ。それよりれい子、サチ、マユ。さっきから聞いてたけど、そんなものに頼っちゃだめよ」 「何とでもおっしゃい」 4人は話を続けるでもなく、とも子のほうから離れていった。 放課後。 「れい子、私さっきの体育、うまくバレーボールできてたでしょ。ようし、この調子でテストもがんばるわ」 「私もすぐ帰って勉強する」 マユとサチの充実に満ちたかのような言葉に、れい子が返答する。 「2人とも、自信のつく薬がうまく効いてるのよね。これで姉さんにいい報告ができるわ」 同じ頃、みのるととも子が並んで歩いている。 「これ、さっきの」 「ああ教科書ね。それより、今度の日曜日、一緒に勉強しましょう。あんた、1学期の中間、赤点が多くて、期末で補習ギリギリまぬがれたけど、今度はちゃんと点取らなきゃよ」 「う、うん」
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