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第六話 ストーカーの過去
「おい九条! サッカーするぞ! 」
「よっしゃー! 今日こそは負けねぇぞ! 負けた方はペプチ奢るんだぞ! 」
昔の俺は三加和とよく外で遊び、教室の中では他のやつらとバカばっかりやってる、いわゆる陽キャだった。
そんな俺も中学に上がり、『恋』というものをするようになった。
ある日、俺はめちゃくちゃタイプの女の子を見つけた。黒髪ロングの女の子だ。
「ちょっと着いて行ってみるか」
その子のことが気になっていた俺は興味本位でその子の後ろを着いていった。
誰も見ていないかという恐怖。
俺だけがその子を見ているという背徳感。
たまらなかった。気付いたらその子の家まで着いて行ってしまってた。流石マズいと思い、その日は帰った。
その次の日も、そのまた次の日もその子のことを着いて回った。
そんな日常も束の間。学校で他のやつに言われたんだ。
そいつは、怒ったような暗い声で、
「お前さ、あいつのことずっと着いてってるけど、あいつ彼氏いるんだよ」
俺の中で何かが壊れる音がした。
恐怖、背徳感、嫉妬。様々な感情が混ざりあって、俺は自分の気持ちを上手くコントロールすることが出来なくなった。
それからというもの、気になる子がいたら
ひたすら着いて回る。それの連続だった。
いつしか、俺は『ストーカー九条』
と言われるようになっていたーー
「それがあだ名の由来なんだ。」
「そんな過去が……何かごめんね
そんなことも知らずに、私……」
「別に良いんだ、今は気にしてないから」
少しの沈黙が続き、ためらうように雫は口を開いた
「そう……でもね! 大和は間違ってないと思う! 」
「え? 」
「その時ストーカーしたのも、素直な自分の気持ちであって、それを気持ち悪いなんて
言う方がおかしいよ! 確かに社会一般的に見ればストーカーは気持ち悪くて軽蔑されるものだけど、大和のその気持ちはちゃんとした恋なんだよ! 」
「雫……」
「私ね、いつも1人だったんだ。
教室で、部室で、生徒会で。
でもそんな時、大和が来てくれた。
何も無い部活に入ってくれた。
私は救われたんだよ! 大和に。
だからね、そんなに落ち込まなくて良いんだよ。私を頼ってくれて良いんだよ。」
誰もいない放課後の学校に響く雫の言葉はまっすぐ俺の胸に突き刺さり俺の心を揺さぶった
「……ありがとう、雫」
そんなに話してなかったけど
こんなこと思ってくれていたんだ。
嬉しい、この気持ちを……伝えたい!!
雫と同じように、真剣に!
「あの、雫!! 俺、雫と出会った時からずっと好きでした! 付き合って下さい!!」
「……はい! 」
今まで壊れていた何かが俺の中で1個1個、繋がっていく気がした
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