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第八話 付き合うストーカー
「なぁ、三加和。」
「何だよ」
ある日の帰り道。俺は三加和に
ある悩みを相談した
「付き合うって何すれば良いんだ? 」
おもむろに話し出した俺を三加和はポカンと口を開けて聞いて、そして喋りだした
「は? お前付き合ってんの? 」
「……うん。」
「は?! マジで?!!! うわ〜、まさかお前に先を越されるとは」
まるで入試に落ちたような口調で固い地面に手をつき落ち込んだ。
三加和がこんな風に落ち込むのを見るのは
久しぶりだ
「やっぱり伊名波さんなのか? 」
「あ、あぁ……」
「伊名波さん美人だもんな〜しかし、お前と伊名波さんとじゃあ釣り合わねぇと思うけどな〜」
こんな時でものこいつはニヤニヤして俺をからかう
「で、何すれば良いんだ? 」
「そ〜だな。やっぱりデートが定番じゃないか」
「デ、デ、デ、デート?!!! まだ手を繋いだ事もないのに?! 」
確かに俺と雫は付き合っている。
でもまだカップルがするようなことは何一つしていない。
「は〜? まだそれくらいもしてないのかよ
流石陰キャというか、初めてお前に呆れるよ」
三加和に呆れられるのは屈辱だ。
だが、確かに三加和の言っていることは正しい
「まずはその腐った根性を叩き直さないといけないな。伊名波さんのためにも」
「すまないな。三加和」
こいつとは小学校からの付き合いだが、こんな話をしたのは初めてだ。
改めて友という存在がどれだけ大切なのかが
思い知らされる
翌日の学校。外は雨が降っていた。
教室の中は異様な空気に包まれていた
「三加和何かあったのか?」
「分からない、ただ1つだけ言えることは
誰かがお前と伊名波さんが付き合っていることを広めたということだ。」
「そんな……」
俺はともかく、それでは雫が迷惑じゃないか。きっとクラスのみんなも伊名波さんのこと……
「ねぇ〜伊名波さ〜ん、あんたストーカーの九条と付き合っているんだってね〜。
チョーウケるんですけど! 」
クラスの女子の中で中心人物と言っても
過言ではない天時萌恵が
雫に絡む。
その小さな体で蔑む様と、
マグマのように赤い髪からつけられた異名が
『赤い小悪魔』
「天時さん。もうすぐ授業が始まります。
席についてください」
「もう〜相変わらず堅いんだから〜。
それよりどうなの〜?ストーカーの九条君と付き合った感想は」
「………。」
彼女の言葉と雫の沈黙で作られるこの空気。
「おい九条!
こういう時に助けてやるのが彼氏ってやつだろ!」
「三加和……。でも、俺は……」
「ぐしぐじすんな!それでも男かよ!
それとも伊名波さんがこのまま言われて
ばっかりで。お前はそれでいいのかよ!」
嫌だ。俺の好きな人、付き合っている人が
目の前でこんなやつに罵声を受けているのが。俺のせいで。
そんなの、我慢できるか!
「おい! 天時! ーー」
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