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光が花びらを開かせ、水が魚たちを起こし、風が家々の風車を回す。
動物も植物も目を覚ました。たっぷりと光を浴び、水を飲み、風を感じる。朝がきた。リラース村の朝がきた。
人間たちも自然と目を覚まし、それぞれ朝の活動を始める。火の使う音、パンの焼ける香ばしい香り、子どもたちの元気な声、一方で慌て出す声。そんな人間たちの中、だれよりも先に外へと飛び出したのは、リルだった。木でできた扉をいっぱいに開け放つと、朝のすがすがしい空気を胸いっぱいすいこんだ。
いい気持ち。
目を閉じてみる。太陽の光が暖かい。風が自分の頬を撫でる。水のたゆたう音が耳に入ってくる。風が強く吹いた、目の前に広がる短い草たちがさらさらと音を立てた。
目を開くと、そこにはリルがいつも見る光景が現れる。リラース村は遠くで青い山々に囲まれている。その手前には森が広がって、森がひらけた広大な草原に人々が生活しているのだ。黄緑色の草原の上にポツリポツリと家を建てて。
この土地の人々はみんな家を低く建てる。自分たちの周りの家に届く光を遮らないようにするためだとか。そして家との間隔をちゃんと空ける。地下を通る水をみんな平等に分けるためだとか。家々にはそれぞれ風車がついている。それも大きな風車。自然の力で自動に回るそれは風の力をつかって小麦などの作物を動力で砕いて粉にしたりするためだとか。この土地に住む人々は自然を利用し、他人と平等に分けあって暮らしている。
そしてリルは、東を向いた。平らな草原が広がる中、突如として高い丘が真っ直ぐそびえ立つ。岩肌をむき出しにし、崖とも言えそうなくらいだが、人々はみんな伝統的に丘と呼んでいるようだ。きっとあそこの頂上に立てば、リラース村が一望できるだろうな。リルはよくそんなことを考えた。
すーと音を立てて身体中に空気が入り込む。朝の風は昼間よりちょっとひんやりしている。
「おはよう、リルちゃん!」
リルの立つすぐ右側から元気なあいさつが聞こえてきた。……といってもそこにはだれもいない。かわりになにかはあるが。
そんなこと気にもとめずリルは顔を右に向けた。太陽の光を反射させたキラキラとした瞳は、声の主に注がれた。
「おはよう! 今日もいいお天気だね」
リルはほぼ地面に向かって言う。ずいぶん顔を下に向けなければ声は届かない。
「そうだね!」ちゃんと返事がする。
「今、お水持ってくるから、ちょっと待っててね」
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