メミラの伝説

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 畑といってもリルの家の畑は小規模なものだった。土を耕して畑にし、そこを木の柵で囲っている簡単な造りだ。でも二人で暮らし、野菜を自分たちの分だけ作るには丁度いい大きさだった。リルたちだけではない。他の住民たちも同じようにしていた。自分たちの必要な分だけ土地を耕し、必要な分を自分たちで作る。足りないものは買ったり交換したりする。リラース村の人々にとって、これは一般的な感覚でなんら不思議なことではなかった。  敷地の狭い中でたくさんの野菜や果物が成長している。そんな植物たちに水をたっぷりとあげ始める。そしてたっぷりとお話を始める。 「おはよう、トマトさん」  まずは赤い実がなるトマトから。赤い実のとなりにはまだ黄色の実をついている。昨日はどっちも黄色だったな。 「今日は赤い実になっているね! えらいえらい」 「でしょ? がんばったんだ!」トマトの葉が風にそよいで動いた。同時に声が聞こえる。 「もう一つもがんばってね」「うん!」  となりの植物に移動する。次はまだ何の実をつけるのかわからない花に水をあげる。花は紫色。この子は一体何になるんだろう? 「はい、お水だよ。冷たくておいしいでしょ?」  この花からは男の子の声がする。 「うん。いつもありがとう、リルちゃん」 「どういたしまして! 君が何の実をつけるのか、楽しみだな!」  あははっと、笑うように花は揺れた。 「うれしいな、ぼくもトマトさんみたいにがんばろっと」  次は実をつけないけどきれいな花大きく開くお花たちだ。まずは背の低いパンジーたち。 「パンジーさんっていろんな色があるよね。見ていて面白いよ」 「そうだね〜。私は赤だけど、となりの子は黄色だし、そのとなりの子はオレンジ色だし」 「花の中にも色がいくつか入っているでしょ? 私たちって鮮やかよね」  黄色のパンジーが答えた。  リルはパンジーの花の上をぬらしながら、笑った。 「そうだね。きれいでいいな」  次はパンジーより背の高い花。立派な茎でまっすぐ伸びてそのてっぺんで大輪の黄色い花を咲かせている。 「今日もとっても元気だね。水あげなくっても大丈夫そうじゃない?」と、リルは冗談交じりで言いながら水をあげる。 「そんな、ひどいよ〜。ちょうだいよ。こんな大きな花を開くことができたのも、毎日リルちゃんがお水をくれるからだよ」
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