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『こんばんわ、水野 竜二の天気予報です。』
(うわっ……///)
布団にくるまりながらラジオをつけ、待つこと30分。今朝聞いたばかりの低くて落ち着いた声に胸が高鳴る。怒られた記憶だけでは説明できないドキドキに、支配される。
悔しいが声もかっこいい。もう彼が朝のお天気コーナーをやったほうが視聴率高くなるんじゃ……
そんなふうに思うと、朝のやり取りが思い出されて気分が沈んだ。ほんとに、自分の良さが全然わからない。何をどうしたら……
枕に顔を沈めると、水野の声が耳元で聞こえるような感覚になる。
『…明日は雲が多く、夕方にかけて冷えそうです。まだまだ、冬物のコートを着たくなる人もいるでしょうね。』
テレビよりも尺に余裕があるからか、文章が柔らかくて情報が多い。聞いていて、友達に教えてもらっているような身近な雰囲気に感じる。
『水野さんは、どんよりした天気の時、どうやって気晴らししますか?』
パーソナリティが水野に聞く。
『俺、あ。私ですか?私は……そもそもどんよりした天気が嫌いじゃないんです(笑)』
え、そうなの?
『静かで……ゲームとか読書とか、集中できるっていうか』
ゲーム!?ゲームするんだ……
しかし、予報ってこんなに自由で良いのか。と思った。朝に怒られてから、天気、天気とばかり思っていて、自分に身近な現象だということをすっかり忘れていた。水野のコメントは自然で、聞く人にすっと入ってくる。伝えることすら、水野から学ぶことばかりだ。
「ムカつく………かっこよすぎるよぉ………」
麻衣は枕を抱えて、うぅ…と唸った。気付けば水野のお天気コーナーは終わっていた。
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