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「昨日と違って、今日は複雑な天気だ。朝のうちは晴れる時間もあるが、だんだんと雲が増えてどんよりとした天気になる。それが霧雨を降らせるかどうかは、地域次第。」
「あの、今朝起きたとき、既に霧雨でしたけど。」
「あ、ほんと?麻衣の家どこ?」
ナチュラルにまた呼び捨てにされたことがとても嬉しかった。麻衣は、東京の沿岸部にある自分の家の住所を伝えた。
水野はそれを聞くと、椅子を立ってパソコンで何やら地図上に色がついた画面をスクロールしている。
「ああ、この雨雲か。これで降ってるならやっぱり若干モデルがズレてるな。ってことは…」
立ったままぶつぶつと、考えことをしている。
トドDが、麻衣に向かって、ナイス、と目くばせした。膠着状態を打破するのに、少しは役に立ったらしい。
「おっけ、ちょっとだけ原稿修正するから返して。」
「はいっ!」
原稿を急いで返す。
それを受け取る手が止まって、水野がこちらをじっと見る。
「何おまえ、なんでそんなに笑ってんの。」
「え、だって、役に立てて嬉しいじゃないですか」
麻衣はえへへ、とにやけていた。
「笑顔がインフレしてんのな。そういう奴が朝のテレビに必要っていうのは、俺でもわかるわ。」
立ったまま無表情で原稿に赤ペンを入れている。
褒められたのか、けなされたのか、微妙にわかりづらいコメントだったが、これまでの水野のドSっぷりから、これは褒め言葉なのだと解釈することにした。
(テレビでの笑顔と、あなたに向けている笑顔は違いますよ)
と、心でそっとつぶやいた。
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