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「彼女ちゃん、孤高の文学美少女って呼ばれてるんだっけ? 私も入学当初に……なんだっけなぁ、フルートの女神がどーのとかっていうわっけわかんないあだ名付けられてさぁ! あれって一体誰が付けてるんだろうね? 謎じゃない?」
「はぁ」
「おいまどか。あんまり変なこと言うなよ」
「なぁに、彰ってば彼女の前だからってカッコつけてんの?」
「そんなんじゃないって」
「あ、照れてる? もしかして照れてる?」
「……うるさいなぁ」
彰くんの耳が赤い。名前で呼び合う二人を見ていると、なんだか仲の良さを見せつけられているようで私はどんどん惨めな気持ちになっていく。
「つーか彼氏は? 待たせてるんじゃないの?」
「あ、そうだった」
「それならさっさと行けば?」
「何そのかわいくない言い方〜。彼女ちゃんに彰の悪口いっぱい吹き込むよ?」
「やめろ。いいから早く行け」
「あーハイハイ。言われなくても行きますよ! じゃあ、今度ゆっくりお話しようね、彼女ちゃん!」
彰くんは小さくなっていく背中をじっと見つめていた。その横顔を見て、私の胸はジクジクと痛む。
「……なんかごめん」
「ううん、別に。まどか先輩だっけ? 意外と喋るんだね。ちょっとびっくりした」
「ああ、アイツ見た目だけは大人しそうに見えるからなぁ」
「仲良いんだね」
「あー……悪くはない、と言っておく。一応」
彰くんはふんわりと笑った。まどか先輩の話をする彰くんは楽しそうだ。そうか。まどか先輩に彼氏がいるから、だから彰くんは自分の気持ちを告げられないのか。
私はぎゅっと手のひらを握る。
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