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「……彰くん」
「ん? どうした?」
「彰くんが推薦断ってわざわざこの学校に来た理由。好きな女の子を追いかけて来たっていうのは本当?」
彰くんの顔色がサッと変わった。
「…………なんで、」
続きの言葉は出てこなかった。
彰くんは驚きと焦りに満ちた、強張った顔で私を見ていた。
ああ、やっぱり。
こんな反応をされたら肯定したも同然だ。私は追いうちをかけるように問いかける。
「私にニセ彼女を頼んだのもその子が関係してるんでしょう?」
彰くんは何も答えない。でも、その方がこちらとしても都合がいい。
……ごめんだなんて、そんな全てを認める言葉。彰くんの口から聞きたくないもの。
「ねぇ、彰くん」
私は彰くんを真っ直ぐに見つめる。彰くんは明らかに困惑した表情をしていた。
私、バス停でまどか先輩といる彰くんを見て、今の二人の会話を聞いて思ったの。やっぱり好きな人といる時の笑顔が一番輝いてるなって。私じゃ、あの笑顔にはさせられないんだなって。
〝彼女〟の期限はまだ数ヶ月残っている。でも、これ以上彰くんの時間を無駄にさせるわけにはいかないのだ。
不思議と心は穏やかだった。これが諦めというやつなのだろうか。
私は小さく息を吸って笑顔を作る。そして、ゆっくりと薄い唇を開いた。
「別れよっか」
これが最良の選択なのだと言い聞かせ、自分の気持ちから逃げる私は。みんなの言う通り、やっぱりずるいやつなのだろうか。
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