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「……神田さんは強いね」
「は、はぁ!? 何それ嫌味!?」
「だって、平岡くんに〝彼女〟がいても自分の気持ちを伝えたんでしょ? だったらすごいよ。私とは大違いだ。……ねぇ神田さん、まどか先輩って知ってる?」
「は? そりゃ知ってるわよ。同じ中学だし部活の先輩だし、それに、」
「平岡くんね、〝まどか先輩〟の事が好きみたいなんだ」
「……は?」
神田さんは今までの怒りがすっと引いたような顔で声を漏らした。だが、すぐに怒りを思い出したらしく眉間にぐっと力が入る。
「……アンタそれ本気で言ってんの?」
「え? うん。だってそうなんでしょ? 平岡くん、好きな人追いかけてこの学校に来たみたいだし。前に一緒にいるところ見かけたけど、すごく仲良さそうだった。平岡くん笑ってたし、きっと、」
「ふっっっざけんじゃないわよ!! んなわけないでしょ!? まどか先輩と平岡は従姉妹だっつーの!! 仲良くて当たり前でしょーが!!」
「……え?」
私はポカンと口を開ける。
「確かに中学の時も二人の関係知らない奴らが勝手に付き合ってるとか噂流してたけど。そんなのはありえないわ。事実無根よ!!」
「……事実、無根」
「まさかアンタ、平岡がまどか先輩のこと好きだと思ったから別れたとか言うんじゃないでしょうね?」
「……うん」
「バッッッカじゃないの!? ガチでマジでホントバカ!! アンタ文学美少女って呼ばれてるんでしょ!? だったら人の気持ちも文章みたいに読み取りなさいよ!!」
そんな無茶な。
「とにかく! あの二人はそんな関係じゃないの! 平岡の好きな人はまったくの別人よ!!」
「……神田さんは……平岡くんの好きな人知ってるの?」
「あのねぇ!! 平岡のこと何年見てると思ってんのよ! そんなのわかりたくなくてもわかっちゃうの!! 平岡の視線の先にはいつも同じ女がいた。一年の頃からずーっとね!!」
神田さんは苛立ったようにくしゃりと前髪を掴む。
「ああもうっ! なんっっであたしがこんなこと……!!」
大きな声で不満を漏らすと、不機嫌そうにスカートのポケットから一通の封筒を取り出した。私をまるで親の仇でも見るような視線で睨みながら、ツカツカと勢いよく近付いてくる。
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