歯車  

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全て記録されてきた物語。少年は、青年となり、そして、中年となった。移り変わりゆく景色を、日々眺め、季節を満喫している。ある日の出来事。中年になった男性は、最後の病のトンネルに迷い込んでしまったのである。光はなく、過ぎてゆく時間だけが、唯一の出口。ある時、痛みに襲われたのだ。こんな日が、また来るだろうと、男性は、予期していた。しかし、その痛みこそが、病のトンネルの出口だったのである。男性は、治療に専念する方向を選択した。痛みは、やがてなくなり、穴も塞がった。やがて、病も治り、今は、恋の病で、自らが、トンネルを掘り続けてしまっている。ある日、通院した時、マスクをした一人の女性に、目が止まった。目しか見えないけれど、目が、とても、とても、綺麗なのだ。男性は、意識し始め、自分の身なりを気にする用になっていく。トンネルに迷い込んでいた時は、鏡で自分を見る事もしなかった男性が、最近は、意識が、向上して、どう相手には、映っているのだろうか。まぁそんな感情の変化からであろう。一目惚れの感情ではなく、なぜか、凄く気になる女性。男性は、ある時、思いきった行動にでるのである。唯一のチャンス。診察券を返して貰うその時に、手を延ばし過ぎたのだ。診察券を返そうとする女性の手に触れてしまったのである。距離を誤ったのだ。いや、言い方を変えれば、思いきった行動にでたのだから、触れたくて仕方なかったのかもしれない。そんなこんなで、日々は過ぎ、歯車は、自動で、また動き始めたのであります。男性は、いつもより、念入りに、歯磨きに夢中になっているそうです。時は流れ。ある日の出来事を思い出したのである。マスクの女性が、室内温度を24℃にしたことを。僕は、見逃さなかった。そして、僕の左足に、なにかのおまじないを架けていた事にも。それ以来、なぜか、自分の思った通りの行動が、出来なくなってしまったのである。不思議なんだけれど、仕方がない。正直、凄く凄く気になるマスクの女性だから、なんとなくの意味も、解る気もしている。もしかしたら15年前のあの日の感覚かなぁなんて、昨日の出来事の用に、思い出す日々を過ごしている。手を繋いだ事も。言い残した言葉の意味も。いつも、会計の時に、呼んでくれていた僕の名前。貴女の名前も、そんな風に、耳にしたから、困惑しちゃった。でもね。君と僕は、結ばれてはいるけれど、解けやすくもあるんだよ。僕は、確かに、秘密の日記帳で、責任を取る。などと言った事も、あったよね。こんな内容も、僕の独りよがり。君は、幸せでいるのかな。本当は、遥か海の向こうで、近くになんて、いないんじゃないのかなって。僕の妄想は、止まらない。妄想だから、描けたんだよ。きっとね。君との出会いも、妄想で、繋がれた事も、全て妄想。君の残した言葉だって。一つだけ真実を告げるのであれば、僕は、ここまで辿り着いたって事だけかな。一部が故障しちゃったけれど。
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