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01.吸血鬼の世界から人間の世界へ
真っ赤な空、真っ赤な世界、朝も昼も夜もない、ごく普通の吸血鬼の世界。吸血鬼のみが住める場所。アールグレイは大親友の渡邊 氷魚(わたなべ ひお)と弓削 翠亜(ゆずり みどりあ)と一緒に住んでいる。所謂ルームシェアというやつだ。同じ部屋に3つの部屋があって、お互いにお互いの部屋を行き来出来るというシンプルな作りになっている。
「はあーあ」
「何ため息ついてんだよ翠、幸せが逃げちまうぞ」
「んもう..ゲームしながら昆布食べてる氷魚ちゃんには言われたくないわよ」
氷魚の主食は昆布。最近は葉っぱ系にはまっているらしい。朝飯はワカメ、昼飯は昆布、夕飯はパセリのような変な食事をとっている。
この世界には朝も昼もないから、時計を持ち歩かないと時間が分からない。
「さてと、そろそろ審議の時間まであと2時間切ったわ、2人とも、さぁ準備して頂戴。お父様に怒られちゃうわよ」
「めんどくさ。」
昆布を口に含みながら立ち上がる氷魚。
「はしたないわよ氷魚ちゃん!ちゃんと昆布を食べてから立ち上がってちょうだい」
「お前は俺のおかんかよ、オカマが」
氷魚が言葉を言い終わる前に、翠亜は詠唱を始めた。この詠唱は長の息子である彼にしか出来ない代物で、この特権を欲している吸血鬼は大量に居る。
翠亜の詠唱が終わると、儀式会場に強制的に移動をした。
「はあーあ、今回あの3人が居るんじゃ、人間界に行ける100人中3人の枠はアイツらで決定かなぁ..」
「あの3人優秀だもんな..特に真ん中のアールグレイ、アイツなんか超優秀みたいじゃん」
沸々と殺意が湧いてくる。翠亜はアールグレイの表情の口角が段々と下がっていることに気づいた。
「翠亜、俺イライラ半端ねぇ...あいつら絶対人間界行けねぇよ、蝙蝠の一味に瞬殺だ」
「俺もそう思うけどさ、紅茶ってそういうとこ感鋭いよね」
「そうだろ?知ってる」
黒髪短髪の吸血鬼がこっちに向かって歩いてくる。なんと風の精霊お墨付きの吸血鬼だ。下級?いや上級の吸血鬼だろう。
「あああああ!!!!翠亜さん、ですかあ!??」
めっちゃきょどってる男性を見ながら、翠亜は軽く頷く。すると、彼はぱああと急に笑顔になり、下に落ちそうになる大きな黒縁眼鏡を両手でくいっと上にあげた。
「お、俺!杉咲 冬真(すぎさき とうま)といいます...!!!こ、この度はこんな俺を審議に呼んで頂き、あ、ありがとうございますううう!!!!」
めっちゃぺこぺこしてる杉咲を見て、翠亜は長を見ながらこう言った。
「あぁ..いいのよ、これはね吸血鬼全員に与えられる権利みたいなもの。私たち先代の吸血鬼の長が始めた儀式よ。私たちは人間界に巣食う蝙蝠(コウモリ)の一味を倒さないといけない、それをこの儀で確かめるの」
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